食品の品質管理の仕事は人気がないようです。
そのため「食品の品質管理に就職転職やめとけ」いったサイトをよく見かけます。
私は、企業向けの加工用食品や食品添加物を製造している会社で、品質管理および品質保証の仕事を20年しています。
そこで「食品の品質管理に就職転職やめとけ」の真偽について解説します。
食品の品質管理の主な仕事内容
食品の検査と分析
製造業では製品を作り、販売します。
製造された品目が適正なものか、品質管理部門では検査をします。
検査して「合格」となったものが、社会に流通することになります。
食品の検査業務は大きく分けて、理化学検査、細菌検査、官能検査があります。
特徴は以下の通りです。
- 理化学検査: 機器分析や分析化学に手法を用いて、製品中の水分やpHなどの成分を分析します。
- 細菌検査: 製品の細菌検査を行い、食品が安全であることを確認します。
- 官能検査: 味や香りなどの感覚的な評価を行います。
種類 | 検査項目 | 使用する機器・培地など |
理化学検査 | 水分 | 水分計 |
pH | pH計 | |
融点 | 融点計 | |
カフェイン含量 | HPLC | |
細菌検査 | 一般生菌数 | 標準寒天培地 |
カビ酵母 | ポテトデキストロース培地 | |
大腸菌群 | BGLB | |
官能検査 | 味・におい | ー |
工場内の衛生管理
検査だけでなく、製造現場で業務を行うことがあります。
例えば衛生管理や小集団活動です。
- 衛生管理: 製造現場と連携し、作業テーブルや製造機械、道具、作業員の手などを拭き取り、洗浄確認を行います。
- 小集団活動: 定期的に工場内を巡回し、改善すべき点を確認します。
マニュアルやルールの策定と遵守状況のチェック
工場の中のマネジメントシステムやマニュアルに関わる業務も行います。
- マネジメントシステムの構築:FSSC22000やISO9000といったマネジメントシステムの構築・維持をします。
- マニュアル作成: 衛生管理や製造に関するマニュアルやルールを作成し、その遵守状況をチェックします。
クレームの原因調査
原因調査: 取引先からの苦情(異物混入、規定量不足など)に対して原因を調査し、問題を解決します。
規格書の作成と表示の確認
お客さん向けの書類の作成や製品の表示の確認を行うことがあります。
特に製品の表示に誤りがあると製品回収につながるため、責任を負うことになります。
- 製品規格書: 製品の重量、包装容器内の入数、原材料配合の内容や含まれるアレルギー物質などの情報をまとめた規格書を作成します。
- 一括表示: 製品のパッケージに記載される原材料や内容量、成分情報、賞味期限などの表示を確認します。
食品の品質管理に就職転職がやめとけ言われる理由
厳しい労働環境・高ストレス
食品の品質管理の仕事は、長時間労働や不規則な勤務時間を伴うことがあります。
土日に稼働する食品工場では、製品の出荷に関わる部署であるため、土日に業務があることもあるでしょう。
また、クレーム担当や多くの関係部門との調整を必要する立場であれば、ストレスがかかります。
低賃金
大手転職サイトに、国税庁が発表した「令和4年分 民間給与実態統計調査」を元に食品メーカーや業界を含む製造業の平均年収の記載がありました。
食品メーカーや業界を含む製造業の年収は約501万円でした。
給与所得者全体の平均は458万円であり、全体平均よりも高いという結果が出ています。
給料が他の業界に比較して比較的低いと声を聞きますが、実態はそうでないようです。
専門知識の必要性
キャリア採用やマネジメントを行う立場の転職であれば、食品化学、分析化学、微生物学などの専門知識が必要とされます。
食品の検査業務には、幅広い知識を駆使するため、理系の大学院卒や大卒の知識は欲しいところです。マネジメントをする立場となれば、社内外に業務の説明を行う機会があるためです。
契約社員や派遣社員の立場で業務に就くのであれば、高校卒業程度の化学の知識があることが望ましいです。
そうすれば検査では分析機器や試薬を扱うことが多いため、入社後に拒否感が無く働けるでしょう。
どのような立場で就職転職しても、入社後は継続的な学習が求められますので専門性を身に付ける覚悟が必要です。
キャリアパスの限定
一部の企業では、昇進や給与上昇の機会が限られるかもしれません。
というのは、製造業の花形は、営業、製造部門、研究と言われます。
あなたが社長を目指しているならば、品質管理に転職就職は向いていないかもしれません。
食品の品質管理のメリット
しかし、実際には以下のようなメリットもあります。
安定した雇用
食品産業は景気の影響を受けにくく、需要が安定しています。
これは、食事は人々の生活において基本的に必要なものであり、景気が良くても悪くても食べ物の需要は一定であるためです。
専門知識の獲得
食品に関する専門的な知識やスキルを身につけることができます。
機器分析、食品化学、有機化学、微生物学、幅広い知識を学べることができます。
また、検査スキルは、多くの企業に共通するものです。もしあなたが転職を考えるならば、次の転職先に得られた専門知識をアピールできるかもしれません。
社会貢献
食の安全を守る重要な役割を担うことができます。
ふくさんの職場
私は加工用食品や食品添加物の品質管理および品質保証の仕事を20年従事しています。
20代では、工場の品質管理部門で、製品の理化学、微生物検査を担当していました。
品質保証部門の仕事を経て、現在改めてマネジメント立場で工場の品質管理部門の仕事に従事しています。
品質管理の検査業務は、同じことの繰り返しに思われがちです。一方で分析機器は日々進歩をしており、効率的に業務ができるように業務改善に奮闘しています。
職場では、一緒に働いてもらっている若手社員さんや派遣社員さんにも、新しい技術や知識をつけてもらうことを心掛けています。最近では社内にてながら参加できる企業の無料のオンラインセミナーが多数開催されています。積極的に参加をしてもらっています。
専門知識の必要性がなくて不安のある方は、職場によっては学べる機会を設けている場合もあります。
実際に職場に尋ねてみるのが良いと思います。
・無料オンラインセミナーを実施している分析機器メーカー
京都電子工業株式会社
HORIBA
食品の品質管理に就職転職がやめとけに対するふくさんの回答(まとめ)
食品の品質管理は、検査だけでなく、製造現場に関わりことがあったり、クレーム対応を行うことがあり、
ストレスフルになることがあります。
一方で、食品製造業は雇用が安定しており、大きな会社にであるほど賃金も決して低くありません。
また、専門性を生かした働き方ができる職場でもあります。
そのため、「やめておけ」という助言は一般化しすぎている可能性があると考えます。
個人の適性や興味、特定の企業の労働環境などを総合的に考慮して判断することが重要です。